平成29年7月調査報告書
1.本調査の目的
昨年,大分県日出町内に住む小学生の保護者を対象として「子育ての悩みに関する調査」を実施しました。その中で,回答を寄せていただいた361名の保護者のうち,じつに14%が「自分の子どもが不登校になるのではないか」という不安を抱えていること,また,同じ悩みを抱える仲間との対話に関する潜在的ニーズを抱えた保護者が27%も存在していることが明らかとなりました。
今回は「子育ての悩みに関する調査」の第二弾で,「中学生保護者編」となっています。前回と同様,日出町教育委員会をはじめとする日出町内の学校の先生方,地域の関係機関の方々,そしてなにより調査に回答してくださった保護者の皆様方には多大なご協力をいただきました。まずはこの場をお借りして,厚く御礼申し上げます。
さて,先日,「平成29年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」(平成30年10月速報値)が発表されました。それによると,平成29年度の不登校児童生徒数は144,031人となり,平成13年度の138,722人を上回って過去最高となりました。少子化が叫ばれる中,しばらく横ばいだった不登校児童生徒数が,再び増加の一途をたどっているように見えます。
ただ,従来の不登校対策では,「不登校を生じさせない学校づくり」(予防)と,不登校に陥った児童生徒に対する「学校復帰を目標とした支援体制」が組まれることが多かったのですが,近年ではその状況が少し変わりつつあります。「不登校に関する実態調査―平成18年度不登校生徒に関する追跡調査報告書」(文部科学省,2014)や,「不登校児童生徒への支援に関する最終報告―1人1人の多様な課題に対応した切れ目のない組織的な支援の推進」(不登校に関する調査協力者会議・文部科学省,2016)などの成果をふまえて,平成28年12月には「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律(教育機会確保法)」が成立し,翌年2月に施行されました。
この「教育機会確保法」は,国が学校以外の場で行う学習活動の重要性と不登校児童生徒の休養の必要性を明記した上で,個々の状況に応じた対応を関係者に求める内容となっていて,これまでの不登校対策の枠組みが大きく広がる可能性を秘めています。これまでは学校が子どもたちの教育に関する責任の多くを担ってきましたが,これからは学校だけではなく,地域社会もこれまで以上に子どもたちの教育にしっかりとした責任を果たしていくことが求められるようになってくるでしょう。この法律が,不登校に苦しむ子どもたちの自立への助けとなるかどうかは,われわれ地域社会が彼らに対してどれだけの理解を示し,支援体制を築き上げていけるかにかかっているといっても過言ではありません。
ところで,昨年の「子育ての悩みに関する調査」報告書の中で,不登校児童生徒支援にまつわる「地域格差」の問題を取り上げました。すなわち,都市部においては不登校児童生徒に対する地域の支援体制が充実しつつある一方で,地方では社会資源等の乏しさから,その体制整備がなかなか進まないという現状があります。不登校児童生徒の支援に対する地域社会の役割が今後ますます増大していくことが予想される中で,この「地域格差」の問題は,これからの不登校対策を検討する上での重要な課題の1つとなってくるでしょう。これに対応していくためには,地方のニーズに合わせた支援体制を構築していくことが求められます。
本調査は「不登校児童生徒に寄り添う親同士のネットワークの構築事業」の一環として,日出町内に住む中学生の保護者の困りやニーズを明らかにすることを目的として実施されました。前回の調査結果とあわせて本報告書が,地方における不登校児童生徒ならびに家族に対する支援体制構築の一助となることを期待します。
2.方法
(1)調査対象者:日出町内の中学校に通う全ての生徒(826名)の保護者(全数調査)。
(2)調査日時:平成30年7月(夏休み前)〜10月
(3)調査方法:質問紙調査法(無記名回答方式)
(4)調査手続き:日出町教育委員会の協力を得て,各中学校の担任によって,日出町内の中学校に通う全ての生徒に対して保護者宛の調査票が配布されました。調査票の表紙には,本調査の趣旨と目的,データ処理の方法ならびに個人情報保護について明記した上で,回答を依頼しました。回答し終わった調査票については,同封した返信用封筒にてパワーウェーブ日出事務局宛に返送(料金後納)するよう依頼しました。
(5)調査内容:
@回答者の基本的属性
生徒との続柄,生徒の学年・性別,家族構成,など。
A子育てにおける心配ごとに関する質問項目
子どもに関する心配ごと,心配ごとが生じた際の相談相手(相談先),心配ごとを解決するために充実が期待されるもの,など。
B子どもの登校状況と保護者の困りに関する質問項目
子どもの登校状況,子どもが登校を嫌がった理由,子どもの登校に関する相談先,登校を嫌がる子どもについての困り・心配ごと,学校以外の居場所の利用,不登校に対する保護者の不安,保護者同士による学び合いの場の有用性,など。
3.結果と考察
調査票を配布した826名の生徒の保護者から,135通の調査票が返送され回収されました。回収率は16.3%でした。
(1)基本的属性
@回答者の続柄
調査票の回答者の内訳は,図1のようになりました。回答者は,母親が124名(92%)と最も多く,父親は10名(7%),無回答が1名(1%)でした。
A子どもの学年,性別
子どもの学年,性別の内訳は図2に示しました。中学1年男子と中学2年男子の保護者からの回答がやや多いようです。
B同居家族の構成
同居している家族の構成は図3に示しました。ここで,「父のみ」あるいは「母のみ」と回答しながら,同時に「3世代同居」とも回答しているものは,全て「3世代同居」へと分類しています。
図3をみると,「2世代同居」が69%と最も多く,次いで「3世代同居」が22%となっていました。他方,「母のみ」と回答した保護者も9%いて,ひとり親家庭も少なくないことが分かります。
(2)子育てにおける心配ごとについて
@子どもに関する現在の心配ごと(複数回答)
子どもに関する現在の心配ごとについて尋ねました(図4)。この項目は複数回答可であるため,割合の合計は100%になりません。以下,「複数回答」と記載してある項目も同じです。
心配ごとのトップは「勉強,進学のこと」で86名(64%),次いで「生活態度」の36名(27%),「友人関係」の28名(21%)と続いていました。昨年,実施した小学生の保護者対象の調査で最も多い心配ごとは,「勉強,進学のこと」(37%),「友人関係」(28%),「生活態度」(20%)となっていましたから,中学生になると子どもの「勉強,進学」と「生活態度」を心配する保護者が増えるようです。また,「心配なことは特にない」と答えた保護者は30名(22%)で,小学生の時(36%)よりも減少していることから,子どもが中学生になると心配ごとを抱える保護者が増えていることが分かります。さらに,子どもの「病気」について心配しておられる保護者が7名(5%),子どもの「障がい」について心配しておられる保護者が2名(1%),子どもの「登校」について心配しておられる保護者も10名(7%)おられました。
記述回答においては,「携帯電話の扱い」「ゲーム・ネット」という記述や,先生と子どもとの関係を心配する声がありました。
A子どものことで心配ごとが生じた際の保護者の相談相手(相談先)(複数回答)
子どものことで心配ごとが生じた際の保護者の相談相手(相談先)について尋ねました(図5)。
保護者の相談相手(相談先)として最も多かったのは,「家族」の103名(76%)で,次いで「友人」の95名(70%),「担任の先生」の51名(38%)と続いていました。これは昨年実施した小学生保護者の調査結果と同じ傾向で,やはり「家族」「友人」「担任の先生」が保護者の相談相手のトップ3ということができます。
なお,「スクール・カウンセラー」に相談すると回答した者は2名(1%),「スクール・ソーシャルワーカー」に相談すると回答した者は0名と少ない結果でした。学校でも校内専門家の活用に関する広報や声かけなどを行っているものの,未だその活用は十分には進んでいないようです。さらに,学校外の相談機関である「教育センター」「児童相談所」「福祉事務所」などに相談すると回答したのは0〜3名,「病院・クリニック」に相談すると回答した保護者は10名でした。
B心配ごとを解決するために充実が期待されるもの(複数回答)
心配ごとを解決するために,今後,さらなる充実が期待されるものについて尋ねました(図6)。
最も多かったのは,「家族との対話」の78名(58%)で,次いで「担任の先生との対話」の66名(49%),「同じ悩みを持つ仲間同士の対話」の46名(34%)でした。保護者は子どものことで,もっと家族や担任の先生と対話をしたいと思っていることが分かります。
また,「同じ悩みを持つ仲間同士の対話」が「友人との対話」を抜いて第3位に入っていることも注目されます。実際に同じ悩みを持つ仲間に相談することはまだ少ないものの,潜在的には同じ悩みを持つ仲間と対話したいというニーズをもった保護者が多いことを示しています。今後,どのようにして「同じ悩みを持つ仲間」に出会える機会を用意していけるかは,これからの保護者支援を考える上で重要なポイントになりそうです。
その他,「スクール・カウンセラーとの対話」は14名(10%),「スクール・ソーシャルワーカーとの対話」は7名(5%),「担任の先生以外との対話」は16名(12%)となっており,これらは現状の相談相手(相談先)として選ばれることは少ないのですが,保護者の潜在的な相談ニーズは一定のものがあります。保護者の心配ごとを担任の先生が受け止めるだけでなく,こうした担任以外の教員や校内専門家に保護者をつないでいくことも,今後,学校側が力を入れていくべき課題といえるでしょう。
(3)子どもの登校状況と保護者の困りについて
@子どもの登校状況
中学校に入学してから現在までの子どもの登校状況について尋ねました(図7)。
回答していただいた135名の保護者のうち,107名(79%)の保護者は「登校を嫌がることはなかった」と回答していますが,「一時的に登校を嫌がることがあった」と答えた保護者が25名(19%),「長期にわたり登校を嫌がることがあった」と答えた保護者は2名(1%)いました。これは昨年実施した小学生保護者の調査結果とほぼ同じ傾向です。
A子どもが登校を嫌がった理由(複数回答)
子どもの登校状況に関する設問において,「一時的に登校を嫌がることがあった」または「長期にわたり登校を嫌がることがあった」と回答した保護者27名に対して,さらにその理由を尋ねました(図8)。
その結果,「友人との関係をめぐる問題」11名(41%),「先生との関係をめぐる問題」10名(37%)「勉強をめぐる問題」と「学校の決まりをめぐる問題」がともに8名(30%)となりました。昨年の小学生保護者の調査では,「友人との関係をめぐる問題」54.2%がダントツのトップで,「勉強をめぐる問題」18.6%,「先生との関係をめぐる問題」15.7%と続いていましたから,中学生になると「先生との関係」「勉強」「学校の決まり」をめぐって登校を嫌がる子どもが増えていることが分かります。
なお,「家庭内の問題」「親子関係をめぐる問題」と答えた保護者はともに0名でした。
B子どもの登校状況に関する相談先(複数回答)
子どもの登校状況に関する設問において,「一時的に登校を嫌がることがあった」または「長期にわたり登校を嫌がることがあった」と回答した保護者27名に対して,このことに関する相談相手(相談相手)を尋ねました(図9)。
その結果,最も多かったのは「家族」の13名(48%)で,「友人」9名(33%),「担任の先生」8名(30%)と続きました。小学生保護者の調査結果では,「家族」74%,「担任」51%,「友人」28%でしたから,中学生になると「家族」や「担任の先生」に相談する保護者が少なくなっていることが気にかかります。また,学校内の専門家である「スクール・カウンセラー」は1名(4%),「スクール・ソーシャルワーカー」は0名とほとんど活用されていませんでした。他には,「病院・クリニック」が5名(19%),「同じ悩みを持つ仲間」が4名(15%),「誰にも相談しない」と回答した保護者が8名(30%)いました
C登校を嫌がる子どもについての困り・心配ごと
子どもの登校状況に関する設問において,「一時的に登校を嫌がることがあった」または「長期にわたり登校を嫌がることがあった」と回答した保護者27名に対して,登校を嫌がる子どもについての困り・心配ごとを尋ねました。
@)子どもの状態理解や接し方について(図10)
登校を嫌がる子どもの状態理解や接し方について,「とても困った」7名,「少し困った」14名を合わせると21名となり,登校を嫌がる子どもを抱える保護者の78%が子どもの状態理解や接し方に関する困りを抱えていたことが分かります。
記述回答では,「親の言う事を聞かない」「先生が嫌と言うので,とにかく話をきいた」「少しの体調不良で休もうとする。さぼりなのかどちらなのかがわからない」「イヤな事を言う子がいるので行きたくないと言う。どう対応してよいかがわからない」「無理やり登校させるべきか,休ませるか,親としての葛藤があった」といった困りがあるようです。
A)子どもの友人関係について(図11)
登校を嫌がる子どもの友人関係について,「とても心配」1名と「少し心配」12名を合わせると13名となり,登校を嫌がる子どもを抱える保護者の48%が子どもの友人関係に関する困りを抱えていました。
記述回答では,「人とのかかわりをさけていて,今は友人がいない」「小学校時代と比べ,人数も増え,彼の事を知らない子ども達ばかりなので,お互いにトラブルになるのではないかと心配」「スマホのライングループがクラスであるみたい。子供はガラケーなのでラインができないと言う。スマホにかえるか,そのままか悩んでいる」「最近,Lineで親の知らないところでコミュニケーションが広がっていたことが発覚した」「聞いてもあまり話してくれないのでよくわからない」などがありました。
B)子どもの生活態度について(図12)
登校を嫌がる子どもの生活態度について,「とても心配」7名と「少し心配」13名を合わせると20名となり,登校を嫌がる子どもを抱える保護者の実に74%が子どもの生活態度に関する困りを抱えていました。
記述回答では,「ゲーム依存の傾向がある」「ネットゲームの時間が長い」「ゲームがメインの生活改善が難しい」「ゲーム時間が長く,夜ふかしになりがち」のようにゲームをめぐる心配ごとが多く挙げられていました。他にも,「私達の常識が全く通じない」「反抗期なのか,日によって波があります。ささいな事を,ケンカごしに言うときがあります」のように思春期特有の難しさもあるようです。
C)子どもの勉強(進学)について(図13)
登校を嫌がる子どもの勉強(進学)について,「とても心配」15名と「少し心配」10名を合わせると25名となり,登校を嫌がる子どもを抱える保護者の実に93%が子どもの勉強(進学)に関する困りを抱えていました。ここは,小学生保護者の調査結果よりも顕著に増加しています。中学生になると,やはり勉強の気がかりが増えるようです。
記述回答では,「現在の成績で本当に高校に行けるのか心配」「本人の方向性がまだはっきりしない」「勉強について行けず,進学についても不安が大きい」「勉強の仕方がよくわからないようで親がこうしたら?と言ったりしても親の言う事は納得できないようで…」といった不安が大きいようでした。
D)子どもの将来(就職・社会的自立)について(図14)
登校を嫌がる子どもの将来(就職・社会的自立)について,「とても心配」11名と「少し心配」9名を合わせると20名となり,登校を嫌がる子どもを抱える保護者の74%が子どもの将来に関する心配を抱えていました。
記述回答では,「コミュニケーションが苦手な為」「成績が悪いのでよい職業に就けるのか」「消極的なので」「進学が不安で仕方ないので,そのまま就職は出来ないと思う。バイトで生活する様にはなってほしくないので」といった記述がみられました。
E)子どもの病気・障がいについて(図15)
登校を嫌がる子どもの病気・障がいについて,「とても心配」3名と「少し心配」6名を合わせると9名となり,登校を嫌がる子どもを抱える保護者の33%が子どもの病気・障がいに関する困りを抱えていました。
記述回答をみると,「最近よく聞く発達障害なのではと心配になることがある」「将来どんな大人になるのか,仕事に就けるのか,自立できるのか,とても心配」といった記述がみられた。
小学生保護者の調査結果と比べると,やはり中学生では「生活態度」や「勉強(進学)」に関する困りや心配ごとが増えるようで,こうした点をふまえた保護者支援が望まれます。
D登校を嫌がる子どもの学校以外の居場所の利用について
子どもの登校状況に関する設問において,「一時的に登校を嫌がることがあった」または「長期にわたり登校を嫌がることがあった」と回答した保護者27名に対して,学校以外の居場所の利用について尋ねました(図16)。その結果,「フリースクール」と「子ども食堂」がともに1名(4%)ずつで,残りの25名(93%)は「利用していない」という結果でした。記述回答では,「日出町にどんな場所があるのか,わからない。別府や大分にはたくさんあるようだが遠い」という記述がみられました。
E不登校に対する保護者の不安
回答者全員に対して,自分の子どもが不登校になるのではないかという不安の有無について尋ねました(図17)。その結果,「頻繁にそう思う」と答えた保護者は1名,「時々そう思う」と答えた保護者は23名で,これらを合わせると24名となり,全体の18%の保護者が不登校に関する不安を抱えていることが分かりました。
記述回答では,「部活,学業,塾通い,中学生としての厳しい学校生活に疲れがたまっている様に見えて,時々不登校になってしまうのではないかと心配になる時がある」「徐々に友達とのトラブルが増え,部活を休みがちになってきた」「友達との関係次第では,そうなってもおかしくない」「今日は行きたくないなと思いながらも頑張って登校している時があると思うから」「身近な人のお子さんが不登校になり,他人事ではないと感じる」「思春期の子どもは,何をきっかけに不登校になるのかわからない」「意地悪をするような人とクラスが一緒になったら,もしかしたらと思う事もある」といった記述がありました。
一方で,「とても楽しいクラスと聞いているので,毎日元気に登校している」「今のところ楽しく通っている様だし,学校や部活,友人同士内の話などよく話してくれて表情がくもっていることはないから」「意欲が割と見られ,生き々している感じがみてとれる。良く家で色々な話をしてくれる。よくしゃべるので,色々なことがわかる」「友達に恵まれているので。担任の先生がとても良い」といった記述も見られました。
E保護者同士による学び合いの場の有用性
保護者同士による学び合いの場の有用性について尋ねました(図18)。その結果,「とても役に立つ」と答えた保護者は32名,「少しは役に立つ」と答えた保護者は60名で,両者を合わせると92名となり,68%の保護者がこうした学び合いの場の有用性を認めていることが分かります。
記述回答では,「自分だけでは,どうしても考えが狭くなる」「ひとりで悩むより,話を聞く相手がいれば,こんなもんだと安心できると思うから」「第三者の意見を取り入れることで,解決策がみつかる可能性が高いと考える」「皆がどう思うか一般論が分かるので,あと何かあった時の相談先も分かるので」「お互いに情報を共有できるから」「悩んでいる親ごさんにとっては誰かに相談したり話を聞いたりしてみたいと思うから」「自分とは違う考え方で道が開けたり,聞いてもらうだけで楽になる事もある為」という意見もありました。
一方で,「心配事が人によって違うし,意見も違うから」「役に立つとは思うが,なかなかその場に行く機会(勇気)と時間がない」「人に会って悩みを話したりするのが苦手な場合もある」「聞かれたくないこともあるので,大人数では話したくない」「本当に悩んでいることは,他の人に相談しづらい」「保護者同士では本心を話すことはごくまれだと思うので役には立たないと思う」「他人にあまり子どもについての悩みを知られたくないと思う。他言する人がいると思う」といった意見もありました。
こうした意見の中には,保護者同士で学び合う場を創ろうとするときに考慮すべきヒントが隠されています。それは「徹底した個別性への配慮」であったり,「参加しやすくなるきっかけづくり」「参加しやすい場所・時間帯への配慮」「プライベートな悩みを話したくない人への配慮」「人前で話すことが苦手な人への配慮」などです。そして何より,「場に対する信頼」を地道に築き上げてゆくことが何より大切となってきます。
(4)子育ての悩み等ついての自由記述回答
調査票最後の自由記述欄には,「我が子がお世話になっている学校では,先生方,学校サイドがとても手厚くして下さっています。とてもありがたいことだと日々感じています」「私の様に話せる人はいいのですが,やはりそうでない方もいると思うので,この様な形でサポートに動いて下さる団体はとても大事だと思います」「アンケート結果がきちんと親に行くようにして下さい。やりっぱなしにならない事を願います」「学校に行っている子供達の親でも同じようにいろいろ悩みがあると思います。不登校を支えるサポートはもちろん必要ですが,不登校にならないように学校や地域などが支えあうサポート作りも必要だと思います」「子どもが大きくなると親は衣・食・住を整えるようなサポートをする位になりますが,親は親で仕事が忙しすぎて充分なサポートができていない。親のライフワークバランス(執筆者注:ワークライフバランス)が取れていない」といった意見がありました。このような意見をふまえながら,今後は学校のみならず,学校以外の地域社会も含めた支援体制を構築していくことが望まれます。
4.付記
この調査は,大分県の事業委託(地域を担うNPO協働モデル創出事業「不登校児童生徒に寄り添う親同士のネットワークの構築事業」)により,NPO法人パワーウェーブ日出が主体となって,大分県,日出町教育委員会,日出町子育て支援課,日出町社会福祉協議会,大分県社会福祉協議会,大分大学,その他関係機関の協力を得て実施されました。調査結果の集計はNPO法人パワーウェーブ日出がおこない,報告書の執筆は溝口(大分大学)が担当しました。関係機関の方々にはこの場を借りて厚く御礼申し上げます。
5.引用文献
文部科学省 2018 平成29年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査 http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/30/10/1410392.htm
不登校に関する調査研究協力者会議(文部科学省) 2016 不登校児童生徒への支援に関する最終報告 〜一人一人の多様な課題に対応した切れ目のない組織的な支援の推進〜 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/108/houkoku/1374848.htm
文部科学省 2014 不登校に関する実態調査〜平成18年度不登校生徒に関する追跡調査報告書〜 http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1349956.htm